P2P 匿名掲示板 webrtc-bbs で伝えたいこと

概要

先日 WebRTC を用いた P2P 型分散匿名掲示板 webrtc-bbs を公開しましたが、これについて私が思っていること、伝えたいことを文章の形で表現してみます。

P2P の悪いイメージ

Peer-to-Peer (P2P) といえばまず思いつくのがファイル共有ソフトです。P2Pアーキテクチャーは大容量のファイルの交換に適している一方、その匿名性ゆえにしばしば著作権を侵害するようなファイルの交換に利用されてきたことは周知のことかと思います。

日本で最も有名なものは金子勇さんによる Winny でしょう。Winny も他の P2P ファイル共有ソフトの例に漏れず、「例外的とはいえない」数のユーザーにより著作権侵害ファイルの交換に利用されました。

その結果、作者の金子さんは著作権侵害行為の幇助の罪で起訴され、およそ 7 年の間検察を相手に法廷で争うことになりました。そして 2011 年、金子さんに著作権侵害幇助の意図はなかったことが最高裁により認められ、裁判は無罪判決で幕を閉じました。

しかし現状として「P2P に関わると逮捕される」「サービスに P2P 技術を導入していることは伏せるべき」さらには「P2P 即ち悪」といった価値観、イメージが P2P に対して定着してしまっていることは否定できないと思います。そしてそれにより P2P で何かを表現したい若者が気後れしてしまい、その機会を失ってしまっている のではないかと思います。

P2P は夢と自由の技術である

確かに著作権を侵害する行為は罰せられるべきですし、Winny は作者の意図に反してその温床となってしまいました。

しかし、Winny や他の P2P ソフトには未来に繋げるべき素晴らしい技術、教訓があるということも事実だと思います。

P2P に見る夢

私たちがインターネットにおいて何かサービスを提供しようとする場合、その多くはクライアント/サーバー型のアーキテクチャーで実現されます。サービス提供者はクライアントをまかなうためのサーバーを用意する必要があり、サービスが大規模になると必然としてサーバー、ネットワーク設備への投資も大きくなりがちです。

これでは学生や非営利の団体のような経済力の大きくない開発者にとって、サービスのアイデアはあっても金銭的な問題によりそのアイデアを諦めなければならない場面が少なからずあると予想されます。

しかし Winny の例を見てみますと、ACCS の調査 によると 2007 年では 30 万のノードがファイル交換に参加していたことが分かります。30 万のノードが同時に大容量のファイルを交換するサービス。これを金子さんは 何も特別なインフラを保持せずに 展開していたのです。

P2P でなら設計次第で世界中で利用されるサービスを安価に展開できる」という夢を、Winny は私たちに示してくれています。

P2P に見る自由

インターネットは誰にでも自由な情報発信の機会を与えてくれますが、時としてその自由な表現が一部の権力によって規制されてしまうことがあります。そしてそれは常に外国で起こっていることばかりではなくて、日本でも 2008 年の青少年ネット規制法、2013 年の特定秘密保護法などインターネットを規制する動きは存在しています。

「自由」はとても難しい問題です。私自身もまだ確かなことを語ることはできませんが、それでも伝えたいことは、表現の規制や検閲が一部の権力によって行われるのは望ましくないのではないか ということです。

P2P では表現の場はそこにいる人たちで作り上げられます。一部のサーバーを停止させれば場は失われるといったことはなく、「不当な」規制、検閲に対抗できる力を持っています。そして 規制や検閲は場を構成する人たち自身により行われるべきである というのが、今私が考え、試行錯誤していることです。

P2P は自由を表現する力を備えているとともに、真の自由について考えさせてくれる技術です。

まとめ

  • P2P ってとても楽しい

  • 自由ってとても難しい

  • Winny の件は我々に夢と勇気を与えてくれる

参考